天窓専門メーカーであるベルックスが制作した天窓の第一号は、デンマークで屋根裏を改築して開設された小学校に設置されました。戦争のさなか、公共施設が大変不足していたため、屋根裏の有効利用策として回転式ルーフウインドウが考案されたのです。屋根裏部屋と天窓には古くから強い結びつきがありますが、今日の日本でも、屋根裏部屋の活用はとても注目されてきています。
日本での屋根裏は昔は主に光の入らない物置のスペースとして扱われてきたようですが、近代的な建築では、窓からの光も取り入れることにより、ナチュラルな暮らしを好むアウトドア派の方を中心に「空間を楽しむ」ための活用のされ方になっています。今回はそんな屋根裏と天窓について、実際の建築例も交えながらご紹介したいと思います。
建築基準法における屋根裏について
素朴な山小屋や、隠れ家をイメージさせる屋根裏部屋は、アウトドア派志向の強い方にとって憧れの空間ですよね。
住宅密集地では、どうしても建物の面積が狭くなりがちなので、屋根裏を生活空間として扱うことは、スペース活用の観点でも、とても合理的と言えそうです。
新居を建てる際に、屋根裏の活用方法について、様々な思いを巡らせる方も多いのではないかと思いますが、法律の観点から考えると意外と実現するのが難しいようです。
法律の観点、とはどういうことでしょうか?「屋根裏が違法」ということではもちろんありませんが、注意すべきことがあるようです。
2階建てに屋根裏部屋を乗せると、実は建築基準法上では3階建て扱いになってしまいます。構造計算の対象になったり、防火が厳しくなったり、税金が高くなったりします。
「ということは、屋根裏部屋ではなく諦めて二階建てにする、もしくは頑張って三階建てにするのが得策ってこと?」と思われるかも知れませんが、そうではありません。気軽に小屋裏部屋を実現できるケースはありますので、ご安心ください。
その代表例がログハウスです。2階全体が大屋根の下の小屋裏空間であれば、3階建て扱いにはなりません。ログハウスでなくても、マンサード屋根にしたり、ドームにしたり、勾配の強い屋根を持つことで屋根裏部屋が実現できるケースは多くありますので、基準法のことも考えながら、どのような構造にすると良いかを設計士や工務店と相談して進めることが大切です。
屋根裏部屋の必須アイテム-天窓
屋根裏部屋は空気が淀み、熱がこもりがちですし、当然ながら光が入らないため暗くなってしまいます。そこで、採光と通風換気の両方を叶える『開閉式天窓』の設置がおすすめです。
天窓を付けることで、夜は天窓から星空を眺めることもできますし、設置位置によっては木漏れ日のような日光が差し込みます。生活スペースとして、通常のフロアとは違った楽しみが生まれてとても魅力的ですね。
天窓のある屋根裏部屋の例
屋根裏部屋の設計や活用方法は様々です。憧れの屋根裏部屋活用について、天窓を効果的に取り入れた実際の建築事例を見てみましょう。
《ログハウス》
屋根裏部屋といったらこのイメージを持たれる方も多いと思います。隠れ家をイメージさせるログハウス型の構造は、寝室に、子供部屋に、趣味のスペースにと、その用途を想像するだけでワクワクしてしまいますね。
目線が屋根に近くなるログハウス構造だからこそ、設置された天窓から見える星空などの景色を強く感じながら生活することができそうです。
BESSログハウス
《ドーム型》
現代の土の家をコンセプトに建築設計された「Shell House」は一風変わったドーム型の屋根裏部屋がついています。三次曲面を用いた独創的な円形のスペースが従来の屋根裏部屋のイメージを覆すような、素敵な空間が作られていますね。
天窓は湾曲する垂木の外側で設置し、屋根に馴染ませる設置方法になっており、モダンな建築でなくても違和感なく融合しています。
《マンサード屋根》
マンサード屋根とは、写真のような構造の屋根で、外側の4方向に向けて2段階で勾配がある形状です。窓を設けて屋根裏部屋を設置するのに適した屋根形状と言われています。
この形状により、一般的にイメージする屋根裏部屋に比べて、とても広く、開放感のある空間が出来上がっています。
「木蓮寺の家」
この建築では、日本べルックスの「回転式天窓GGLタイプ」が起点として設計されていて、床面積を損なわずに天窓の手元使用を実現する屋根形状を考えてマンサード屋根になっています。隣接する二軒の隙間から眺望を得るために、南西に斜めに軸を持つ筒状のプランを採用したユニークな構造。
筒状ということは、風の流れの方向が限定されるように思われますが、方角を考慮した風の流れもしっかりと計算されていて、天窓により1年を通しての効果的な通風換気を実現しています。
まとめ
多くの方がお憧れる屋根裏部屋は、天窓を設置することで、より快適で魅力的な空間へと変化することでしょう。
戸建てへの導入を検討する際には、建築基準法など法律面、条件面も考慮して、思い通りの住まいが実現できるよう計画してみてくださいね。